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■3日目(9月14日月曜日)■


私はまたお子ちゃまモードで早寝早起きしてしまった。まだ誰も起きてこない。四万十モードを思い出し、ちょっくら散歩に出る。瀞大橋のたもとにはちょっとした集落があったが家の数は数えられる程度である。釣り宿がすでに起きていて、朝食の時間の騒がしさが道まで漏れてくる。この宿の前には、この近辺ほとんど唯一のジュースの自動販売機があるのでここで缶コーヒーを購入。既にビールは心許ない。

 
朝御飯はパンとベーコンを枝に刺して焚き火で焼く。ワイルドです。



昨日、日寄った分をとりかえずべく、9時半には準備完了、出発。

ふと思った。昨日は誰も沈していない。こういった、みんな一定レベルのメンバーだとそうそう沈はしないものである。まあ、救出に時間をくわないのでそれに越したことはないけど。

ジェット船の来ないうち出発、と、思っていたが甘かった。出発してすぐ、ひとつめのカーブをおおきく曲がりながら下っているとき、上流から来るジェット船。
「船がくるぞーい」
みんなして知らせあって横によける。一隻来たと思ったらまた一隻。またまた一隻。連続していらっしゃる。大波に艇をもっていかれないように姿勢を修正する。
ちょうどそのとき横にぷうさんがいた。やけに岸にちかいところにいる。ちょっとあぶないんじゃないかなと思っている間、ざっと波が引くとぷうさんのカヌーは岩場の上に乗っかっていた。カヌーも水がなければどーしようもない。数回の波を岩の上で耐えていたようにも見えたが、けっきょくぷうさんは沈。荷物のバドワイザーが流れてくる。
すぐににNopさん、でくさんがぷうさんのそばに寄る。救出かと思いきや、写真を撮っていた。


これがそのときの写真。沈したぷうさん。


私は即座にバドワイザーの救出に向かった。ロクな奴がおらんなあ。。。。

かくて、沈の時にぷうさんはバドワイザー2本、シュノーケル1セットを流して、バドワイザーのみ救出。シュノーケルは沈んでしまったらしい。みんなビールは絶対流さないことになっている。既にビールの在庫がないのだ。なお、当のぷうさんによると、このときの状況は「沈」でなくて、「艇から降りた」そうである。まあいいや。

やがて、本当は昨日のゴールになるはずだった湯の口に着くが、広い河原が広がっているだけで、トイレがなさそう。瀞大橋でキャンプして正解であるようだ。


正面に段々畑が見えてきた


のんびりした流れ、ちょくちょく団体でやってくるジェット船。やがて正面に段々畑の集落が見えてくる。地図で見ると「上地」とある。今回のツーリングで段々畑を見るのははじめて。それほどこのへんは切り立った山の中なのだ。

「船が来るぞー」
タイミングが悪かった。私はちょうどざら瀬のなか。結構長いざら瀬で気が付いたらジェット船がせまってくる。
「ひゃあ〜。まずいまずい」
一応瀬なので岸に着けるのもきついと、おもいっきり岸寄りにルートを取って後ろを気にしながら漕ぐ。すぐわきをジェット船が轟音と共に追い抜いていった。
こういうことがあるので、北山川は初心者には勧めにくいなと思う。川自体はそんなに怖いところ無いんですがね。


のんびりと下っていくが、ある欲求が誰ともなしにわきあがる。
「ビールを手に入れたいね。」
「学校と郵便局のある集落は酒屋もあるもんだ」
地図で見ると、次の九重という集落がそれに該当する。ここまで漕いで酒屋探しをしようということになった。



やがて河原が見える。このへんはどこも岩ごろごろの河原が広がっている。上陸した。道が左右にのびている。
「では手分けして行こう」
私とくごさんが郵便局の方にでかける。酒屋どころか、店一軒もない。郵便局の前で雑談するおじいさんふたり。
「このへんに酒屋ありませんかね」
「酒屋、2キロ下のザイショにあるよ」
「この道沿いですか」
「道沿いにある」
ザイショて、なんでしょ。要は川を2キロ下ったところにあるということを理解して、来た道を戻る。Nopさんたちもも戻ってきた。
「お墓まで行ったからきっと村はずれまで行ったと思う」
墓は村のはずれにあるものですね。確かに。

艇のところに戻ろうとすると、妙な看板をみつけた。「泳ぐところ」とかいてある。このへんは子どもたちの遊泳区域らしい。その前でみんなして記念撮影。もとコンパニオンのバイトをしたことがあるぷうさんが「(コン)ぱにおん立ち」のポーズを決めているまわりでみんなが集まる。妙な写真になった。

ジェット船にサービスするぷうさんぱにおん立ち
ジェット船にサービス(写真右)。みんなして看板と記念撮影



酒屋ほしさにどんどん下っていくミヤモトさんに置いて行かれた形で2キロ下流の集落に到着。既にミヤモトさんは酒屋で人数分のビールを入手して戻ってくるところであった。ここでみんなでビールを飲みながら昼食にする。
今日は私はカップやきそば。みんなは各自ラーメンを煮る。
それだけの食事でもおいしく感じるツーリングである。いい景色だね。

 
おひるごはん風景


そこからしばらく下ると、熊野川との合流である。ここで北山川は終わり、熊野川を行くことになる。川幅はいっきに広くなった。ジェット船もはるか向こう側を行くようになる。波がこなくなってちょっと物足りない。

ジェット船が溜まっているところが見えてくると志古のジェット船乗り場である。ここまではひんぱんにバスがあるので、車なしの時はここを利用するといいとのこと。停泊しているジェット船に近づいてみる。


ジェット船に近づく


そこで作業していた係りの人に聞いた話、ジェット船の喫水は40センチだそうだ。これだけでかいものの喫水が40センチとはなかなか驚きである。それでうちらカヌーと同じ所に入ってこれるわけだ。

この下はジェット船が通らないのでこの40センチの喫水は確保されていない。ざら瀬もいつものような注意深さで下るが、もう川幅もひろいのであまり擦りそうな感じではない。まったく漕ぐ必要もなく、ジェット船を気にする必要もなく。

こうなると誰も漕がなくなってしまう。それでも川は流れていく。

「この川、ジェット船来ないと実は物足りないんじゃないの」

 ビール
みんなしてビールモード


そうこう言っているうちに日足の三和大橋がみえてくる。今回橋はこの橋と昨日の瀞大橋のふたつだけ。たいした川である。


小雨にけぶる三和大橋


ここで私の今回のツアーは終わる。明日も漕ぐつもりのでく、くご、ぷうの3人以外はゴールだ。Nopさんとミヤモトさんは今晩中に帰るという。私は明日一日かけて帰ることになっている。


ゴール、上陸


ついにゴールしてしまうのは非常にくやしいのですが、ゴールイン、上陸。
で、また2時間かけて車の回送。その間にミヤモトさんはバスの時間が来て帰っていった。今晩の夜行バスで帰るのである。

私は畳んだキャンペットとカヌー用品一切をAコープで宅急便にして送りにいく。来たときはヤマト便だったが、今回は荷物をすくなめにして宅急便にする。田舎のよさで、荷物の重量は聞かれたけど、いちいち重さを量られなかったとミヤモトさんが言ったのであわてて私も送りに行ったのだ。結果的に、このあと雨が降り出して、撤収を明日にのばしたら送り荷物がずぶぬれになるところであった。出す前にはもちろん水気はよっくふき取ってだす。でも家に到着した荷物にはしっかりビニールがかけられていた。

回送組が帰ってくるころには雨がふりしきっていた。

夜、5人で温泉へ。車があるとちょっと遠くまで行ける。目的地はわたらせ温泉。西日本最大という露天風呂がある。

ここはヒットである。すんごいいい温泉だった。西日本最大というのは嘘でなく、広い露天風呂、さらに奥に行くとまだ露天風呂があるという露天風呂づくしの温泉である。ツーリングの終わりは露天風呂に限る。お勧めである。

既に気が抜けていた我々は、どこかで食事でもしようよ、という成りゆきになる。このへんは店どころか、家もすくないようなところで、食堂なんてほとんどない。あたりは雨になっていて視界も悪い。こりゃしばらく探すのに苦労すんだろうなあ、と思っていたらいきなり目の前に飲み屋の赤提灯があった。
かくて、我々は冷えた生ビールと夕食にありついたのであった。めでたしめでたし。


■4日目(9月15日火曜日)■


朝起きても雨であった。
なんでも台風が来ているとのこと。私は7時半のバスで帰る。

雨の中、9時すぎの特急ワイドビューに乗り込み、名古屋でみそとんかつ丼をいただいて帰りました。


帰りは「ワイドビュー南紀」先頭車からは前が見通せます。お勧め。


けっきょく居残り組もここでツーリングは中止になったとのことであった。見事に台風の来る直前にツアーができてよかったようである。

北山川はジェット船が通るので、あまり初心者にはお勧めしない川だと思います。ジェット船が来たら自分の力で逃げないとならないので。でも、川としてはほかの場所にはない、人の気配のない渓谷を行くツアーができて、非常にすばらしい川です。中級レベルのちゃんとジェット船がよけられる人ならジェット船の波がいい退屈しのぎになる、スリリングな川です。

おしまい



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