那珂川紀行

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竹薮の瀬

竹薮の瀬。台風でえぐられて土の壁を見せる。


竹薮の瀬
川の左右から山が迫ってきて、これから那珂川は山間を流れる。
山が迫ってきて、ほとんど壁になったところを左へ曲がるところがみえてくる。正面は岩壁のうしろに河原。上には川の両岸にロープが渡してある。ここを曲がると那珂川名所の「竹薮の瀬」またの名を「昼飯の瀬」という。左におれた瀞場の直下で川は流れをはやめつつ、左岸の竹薮の岸にあたって右に折れる瀬になっている。ここの左岸の竹薮がくせもので岸にはりだし、カヌーを本流真ん中にすすめていると竹にひっかかって沈という事態がよくあるのだ。
しかし、近年、だんだん竹薮のはりだしが枯れてきて、今年の台風で竹薮の岸はざっくりとえぐり取られ、生々しい土の崖をつくっている。今ではそんなに危ないところでもなくなってしまった。 いつもはここで昼食にして、下ってくるカヌーが沈しやしないかと半分期待しながら食事していたものだが、今回はまだ余裕あるとのことでそのまま進む。「考えてみれば、昼飯の瀬で昼にしなかったのって、ひさしぶりだなあ」確かにその通り。そのくらいここは昼食のおきまりの場所になっていた。

昼食
昼は「日の当たる左岸」で、「どうせならカヌーでしか来れないところ」を条件に、OGIさんがいいところを探し当てた。けっこう那珂川にはいい河原が多い。「テントとか積んできて、こういうところにキャンプしてもいいですよね。」「そうですね。船戸のところに車置いておいて」「うーん、車上あらしが恐い」なんだかんだと言って、那珂川は車できてしまい、昔船戸の河原、今道の駅といういいキャンプ場があるので、ツーリング形式のカヌーはやったことがない。まあ、けっこう人家があるので、車があぶないしね。でも、この河原はまさにカヌーでしか来れない、適当な河原だった。

うんちくの瀬

うんちくの瀬にうかぶOGIさん


うんちくの瀬
川は右にすこし曲がるとひろい川幅でざら瀬になって流れていく。「これが「ころんさんうんちくの瀬」ね」OGIさんが言う。ころんさんとは最近すっかりご無沙汰になってしまったが、初めて「えふきゃん川」に顔をだした私に「今週末オフがあるから水戸の駅まで単身で来てください」と言ってくださっり、カヌーを貸してくれて私にはじめて川下りの体験をさせてくれた、いわば私をカヌーにひきこんだ張本人である。「どうしてそう言うんですか」バジルさんが聞く。「ここは昔はもっと左の崖近くを川の本流が流れていたんだけど、台風の時に流れが変わってこんな瀬が本流になったところなんだって。ころんさんと来ると必ずこのうんちくを言う。だからここはころんさんうんちくの瀬なの。」しかし、その話は私はすでにOGIさんから聞いたのは2回目である。私の目を気にしたか、OGIさんはつけ加えた。「でも俺もいつもここにくると、この話してるな。そのうちOGIさんうんちくの瀬といわれるんじゃないかなあ」その通りです。次からはOGIさんうんちくの瀬といいましょう。

やませみの瀞
この、うんちくの瀬を抜けると、左手にテラスのこぶりな建物が見える。ペンジョンjoyの看板が出ている。この向かい側が数メートルの見上げる崖になっていて、このうえの木の梢に以前来たときにやませみがいた。そのときは木の梢に白黒の体をとまらせて、頭のとさかをいからせて、カヌーが下の方に近づいてもちっとも逃げようとしなかった。やませみは凛々しい鳥である。「ここやませみがいたんだよ」と、言う私の言葉に皆見上げるが、今日はいないようである。うちの嫁さんが「いつもここに来たときに言うけど、毎回いないから嘘と思われるよ。次からここはぽからさんほらふきの瀞になるね。」と、いいかげんなことを言う。ちなみにやませみがいたときは嫁さんは来ていなかった。

大瀬やな

大瀬やな全景。


大瀬のやな
広い河原を通り過ぎると橋が見えてくる。ここが大瀬のやなである。シーズンは川幅いっぱいに水がせき止められ、一カ所に集められ、その先がやなになっていて、哀れ、鮎はみんな打ち上げられる寸法になっている。たいした仕掛けである。このやなのちょっと手前、広い河原の先のところにほんの小さな河原があり、ここで上陸。いつもの道路に水がたまっており、だいぶ増水していることがここでも実感できた。この小さな河原には先客のどこかのオープンデッキカナディアンの団体がいたが、この脇を通って、大瀬のやなにトイレを借用しに行く。この那珂川のコースでは、スタートからゴールまで、ここ以外に公衆トイレはないので、女性連れのツーリングの場合、ここで休憩は必須である。ついでにここで昼食というパターンもいい。鮎焼きはけっこう美味。
ついでに岸からやなを眺める。ここはショベルカーで川をならしてやなをつくるので、川底がけっこう荒いのだ。下っていくカナディアンが一隻、どこでつっかえるのか眺める。いつもの橋脚の向こう側を通っていくコースであった。「そんなにひっかけてないよねえ」「でもちょっとがたがたしてますよ」とりあえず、うちらも同じコースで行くことに決定。
艇に乗り、再出発。やなのわきを下っていくときにやっぱり、ごん、ごんと底を打ったようだが、うまく通りぬけた。はやいスピードで橋の下を取り抜ける。