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98年3月に娘が生まれた。
それ以来、私が何度、娘をだっこして晴れ上がった日曜日の空を恨んだことか。
「ちきしょーカヌー行きたいよお。。。。」
でも、ちゃんといいお父さんやっていれば嫁の許しは出るのである。

なんやかんやと、この期間だけは出かけてもOKという許可がおりた。ちょうどその日程に行けるツアーは北山川ツーリング。ひさしぶりのロングツーリング、今回、去年秋の北上川以来である。

うれしい。。。。お父さんはあそんでくるからねえ〜。


カヌー、キャンプ道具は1週間前にでくさんの所に送った。今回、名古屋のでくさん、大阪のぷうさんが車で参加するので、東京の人間は荷物を送れるのである。ありがたい。現地もかなりの陸の孤島ということで、車が使えるツアーは非常に都合がいい。



■0日目(9月11日金曜日)■


金曜日、会社は定時に切り上げて、深夜バスに乗るべく池袋に向かう。時間があるので神田のミナミに寄って無駄話をして時間をつぶした。実はミナミでも春に北山川ツーリングをやっているのであるが、私は参加できなかった。今回はその雪辱である。売場の階段の壁に貼ってある北山川のきれいな風景を見て、ここに行けるんだ。と、しみじみした。カヌーツーリングができるって幸せだねえ。。。。。

ミナミにはお客さんが来てしまったので退散して、地図を買いに閉店間際の三省堂に寄る。2万5千図の「瀞八丁」「伏拝」「本宮」「大里」が該当個所である。


乗車した西武バス


深夜バスは夜の池袋を出発。朝8時に到着。

池袋から深夜バスに乗るのは今回が始めて。深夜バスのバス停って待合い室とかあるのかと思ったら、池袋の西武バス乗り場は駅前の路上である。トイレもありゃしない。

バス停から路地をはいったところにコンビニをみつけた。ビールを仕入れてバス停にもどる。
さっきから気が付いていたのだが、バス停には、くごさんらしき人がいる。が、近くに池袋名物の浮浪者ふう、でなくって服ぼろんぼろんの、そのもの浮浪者がいて、ちょっと近づく気がしない。
そうこうしているうちにミヤモトさんが来た。
「くごさんは」
「あの人だとおもんだけど」
遠くから手を振ったらくごさんが気が付いた。
「さっき妙な人がいたでしょ」
「いやあ、えらい人が来ちまったと思ったんだけど、動くに動けなくって」
池袋はすごいところである。
とりあえず、東京組はだれも遅刻せず、バスに間にあった。
今回の紀州行きのバスは2台になっていた。待っている客がおおいわけだ。
 
ミヤモトさんは荷物を送れなかったので、全部持参であった。深夜バスの荷物室は、私ははじめて見たのだが、小さい。幅1メートルもないウナギの寝床みたいな、バスの左右に貫通する(らしい)空間である。ミヤモトさんの荷物は嫌な顔をされ、「次から大きな荷物はかんべん」と、釘をさされたが、荷物室に収まった。少し大きめのキャンプ道具一式を持参していた、でくさんの荷物はキャンセルの椅子をつぶして積んでいた。他にもうひとり、カヌーを持ち込んだ客がいたのである。キャンセル待ちが出ない場合、荷物が乗らない可能性もあるわけで、荷物はできるだけ送った方がいいようだ。
 
深夜バスはけっこう眠れないと思ったが、ビールの威力もあって、その晩はそこそこ眠れた。



■1日目(9月12日土曜日)■


やけに道がまがっているので起きた。バスは高速を降りて、とっくに国道を走っていた。今回、車で来ないでよかった。国道だからもっといい道を想像していたのだが、片側1車線、田舎の国道である。このへんは言っては悪いが、陸の孤島と言われる訳が判った。ここに車できたらえらい疲労困憊したであろう。東京から新宮に来るときの目安は名古屋が中間点だそうである。


バスを降車。狭いところなので方向転回ぎりぎり。


8時三交新宮駅前着。ほぼ時間通り。バスから降りて、すぐそこが新宮駅である。

新宮駅には数台の車を停めるスペースがあり、そこでぷうさんの車発見。
でくさんのCR−Vがおらん。まだ来ていないらしい。
見回すと、駅にGパンにTシャツのおねえさん発見。ぷうさんである。
私はすんごいひさしぶりであった。他の人はしょっちゅう遊びに行っているから会っているようですが。
「ゆうべ、寝たの」
「寝てない」
大阪から徹夜で走ってきたらしい。そうだろうなあ。
しばらくすると、でくさんとNopさん到着。
Nopさんも夜中はしってきたとのこと。ねむいを連発。


眠そうなNopさん


朝めしは駅のうどん。
「やはり関西圏はうどんでしょ」
このへんは大坂文化圏とのこと。うどんの汁がうすい色である。新宮駅から西はJR西日本の管轄になる。まさにここが関西と東海の境の駅というわけ。
 
一服して、車に分乗して走り出す。
買い出しをしなくては今回のツアーは始まらない。なにせ、まだ9時。街はねむっている。というより、街の規模が小さくって、店がない。
 
街の路地をうろうろしていたら、酒屋の看板。前をとおりすぎる瞬間に見えた、お弁当の棚の文字
「ここだ」
というわけで、朝っぱらから大挙して酒屋におしかける。
今日の昼、夜、明日の朝、夜、あさっての朝、これだけ仕入れる必要がある。
明日の昼は田戸で「めはりずし」の予定。田戸の「めはりずし」がこのへんで一番おいしかったとはNopさんの弁。
「けっこう食料仕入れる必要があるもんだねえ」
「今日泊まるところは人工物がまったく見えないところだよ。」
ツーリングをはじめたら、ビールも観光地価格でしか仕入れられないんですと。

車を北山川に沿って走らせる。
本当に山間を流れている川という感じである。川にだいぶ山がせまっており、その隙間を道が走っている。たまに集落。しきりにでくさんが3日めの上陸点を気にする。
「どこで車を置くかだよなあ」
最近この川に来たばかりなのがミヤモトさんである。
「このへんにAコープがあったはずだよ」
はたして、日足の街に入ってきたあたりで見えてきたのはAコープ。地図で言うと、役場の手前くらいである。
「なんだ、ここで買い出しできるじゃん」
さっきは買えなかった野菜等を購入。といってもじゃがいもと玉ねぎ程度。
でも、もちろん酒はなし。酒屋に寄っておいてよかった。
ここから宅配便もだせるようである。
 
さて、まだまだ車を上流に走らせる。
しばらく行くとすんごい道になってきた。細いのである。まったく林道。
さらに、時間により工事の場所を抜ける。道もせまく、がけっぷちにガードレールもないようなカーブが連続する。脱輪したらえらいこっちゃ。
 
トンネルを抜けるといきなり道がよくなった。県が変わったらしい。すぐ駐車場のような休憩所がある。先客の男性ばかりの一団がバーベキューをやっていた。
ここから、今日下る最大の瀬が見下ろせるという。
見おろすと、眼下、はるか下に川が見える。あれが下滝の瀬?


写真左がスタート地点方向、写真右が下流の「下滝の瀬」


川が白くなっているところが見えている。それに、岩もでかいらしい。
「大岩がふたつ並んでいる所があるから、左寄りのチキンルートを進むからね」
「横幅の大きいキャンペットならコースの途中でつっかるね。艇一艇分の横幅がないから」
私以外はこのコースが何回か来ているので、初めての私をみんなしてはやす。
その大岩で沈をすると、あとに続く長い瀬で苦労するんだそうだ。
見ると休憩所の入り口の上にこの辺の名物の筏くだりのレリーフがかかっていた。
お金のかかっている、奇麗な公園である。


休憩場にあった筏くだりのレリーフとそれを批評する人々



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